インドネシアの雇用市場、短期契約の増加と若年層の失業が深刻化
正規雇用の割合自体は改善したものの、その多くが短期・契約ベースの雇用であり、雇用の安定性が低く、労働者の士気や生産性を損なう恐れがあるとアナリストは警告している。
JAKARTA ― インドネシアの雇用市場は8月に再び逼迫し、数万人規模の失業増加を背景に失業率が上昇、特に若年層が景気減速の影響を最も強く受けた。
正規雇用の割合は改善したものの、アナリストによれば多くの職が短期・契約ベースであり、雇用の安定性が低く、労働者の士気や生産性の低下につながる可能性があるという。
インドネシア統計局(BPS)が水曜日に発表した年2回の雇用統計によると、2025年8月の全国失業率は4.85%となり、半年前の4.76%から上昇した。
BPS のエディ・マフムド氏は、水曜日にジャカルタで行われた記者会見で、前年同月比では「名目上」4,000人の失業者が減ったものの、8月の失業者数は746万人と、2月の728万人より多いと説明した。
エディ氏によれば、BPS は失業者を新卒者、就職が決まっているが調査時点ではまだ働き始めていない者など、6つのカテゴリーに分類しているという。
失業者の中で最大のグループは1年以上仕事を探し続けている「長期失業者」で、失業者のほぼ3人に1人を占めた。これに続くのが「以前の職歴がある失業者」で30.53%に達した。
失業原因としては解雇によるものは比較的少なく、わずか0.77%(約5万8,000人)にとどまった。製造業が約2万2,800人の解雇を出し全体の約40%を占め、続く小売業と鉱業は合わせて1万7,000人余りだった。
ただし、製造業は2月から8月の間で約70万人の新規雇用を生み出した一方、小売業と農業は同期間で合計約100万人の雇用を失った。
世界銀行が10月に発表した「東アジア・太平洋地域経済アップデート」によれば、インドネシアでは生産性向上につながる産業構造転換がほとんど進んでおらず、製造業の雇用シェアは過去30年間ほぼ横ばいのままだという。
同報告書はまた、インドネシアの若年層失業率が17.3%とアジアでも高い水準で、17.6%のインドに次ぐ高さであることを指摘。これと一致して、BPS の調査でも15〜24歳の失業率が8月は16.9%となり、2月の16.1%から上昇した。
一方、それ以外の年齢層、25〜59歳および60歳以上の失業率は、直近5回の調査で1〜3%程度と低い水準で推移している。
パーマタ銀行のチーフエコノミスト、ジョシュア・パルデデ氏は木曜日、ジャカルタ・ポスト紙に対し、若年層の失業率の高さやパートタイム労働者の増加を背景に、多くの世帯が「非フルタイム労働」に依存していると述べた。パートタイム労働者は8月時点で3,630万人と、前年から166万人増えた。
BPS の雇用の定義は国際労働機関(ILO)に準拠しており、調査対象の1週間(7日間)で「1時間以上」報酬のある仕事をした人は就業者と分類される。
この定義に基づき、週35時間以上働く人をフルタイム、それ以下はパートタイムと不完全就業者(アンダーエンプロイド)に分けている。
ただし批評家の中には、「週1時間の労働で就業とみなすのは現実にそぐわず、インドネシアの失業問題を正しく反映していない」と指摘する声もある。
ジョシュア氏によれば、教育水準別では高校・職業高校卒が最も高い失業率を示しており、「より強固なエントリーレベルのスキルと、より的確な職業紹介の必要性」が浮き彫りになっているという。
「労働者の失業を緩和する政策だけでなく、エントリーレベルの職業紹介の加速、実践的なスキル向上、小規模事業者がより安定的に雇用を吸収できる支援が必要だ」とジョシュア氏は述べた。
8月調査では、雇用のフォーマル(正規)とインフォーマル(非正規)間のシフトも明らかになった。正規雇用は8月時点で42.2%と、2月の40.6%から増加、前年8月の42.05%もわずかに上回った。ただしジョシュア氏は、この増加は主にパートタイム雇用が牽引したもので、フルタイム雇用は停滞していると指摘する。
経済・法律研究センター(Celios)のメディア・ワヒュディ氏は、企業が残業代を払わないなど「合法・違法を問わず賃金を搾取しようとする」“賃金盗用(wage theft)”という問題が深刻化していると指摘。
木曜日に同紙へ語ったところによれば、契約社員は未払い残業や祝日勤務の無償労働などに最も弱い立場にあるという。こうした行為は企業にとって逆効果であり、賃金が低く労働環境が悪いほど、労働者の生産性が低下し、最終的に企業の利益を損なうとも述べた。
「時には、利己的で貪欲な資本主義構造に直面することがあります」と同氏は語る。「多くの企業は利益最大化だけに集中している。しかし最近の研究では、労働者への圧力が強く賃金が低いほど、企業自身がより大きな損失を被ることが示されています。」
asianews.network 2025/12/02